オランダ人アーティストが生み出したチェスボクシング。
最も思考が要求される競技と最も闘争的なスポーツとしう、両極端な概念のコンビネーション。
リングの上で、イップ(29)が対戦者柳瀬総一郎(22)とチェスとボクシングを交互に行います。
どちらかの競技で決着がつけば試合終了。
勝敗はチェックメイトまたはチェスの持ち時間切れ、またはノックアウトで決まります。
目黒通りから少し入つた路地にある會場が今日の舞臺。ワンドリンク付きの入場券でも買はされるのかと思ひきやタダで入場。場内はお洒落なバーのやうな雰圍氣で、或いは普段はバーとして經營されてゐるのかもしれない。奧のスペースではDJが曲をかけてゐる。
老若男女、洋の東西を問はず人が集まつてゐて大盛況。僕が著いた午後八時は既に試合が始まらうかといふ時で、リングの周りは人だかりでとてもリングに近附けさうもない。仕方が無いので二階に伸びるスロープの途中に立つことにした。ここからなら寫眞も撮れるだらうなんて思つてゐたら、選手入場の花道(?)がそのスロープだつたのには焦つた。横に係員ゐたのに、どうして注意されなかつたのだらう。
以下が撮つた寫眞。寫眞はフラッシュを焚いたり焚かなかつたりしたので色調がばらばら。
柳瀬選手に續いてイップ選手入場。二人の實力も所屬も全く分からない。どつちかがチャンピオンでどつちかが挑戰者なのか。どつちかといへばイップ選手がチャンピオンつぽいけど、そんな紹介あつたつけ。MCが喋つてる間はずつと哀川翔に似てるなあと思つてゐたのでアナウンスはあまり聞いてゐない。
第1ラウンドチェス。二人がつけてる耳當ては助言を聞く爲の無線ヘッドホンではなく、觀客からの助言を封じる爲のもの。多分。それはともかく地味だなあ。イップ選手の肩にかかつたタオルの意味が分からん。4分間のチェスでタオル要るのか。
ちなみにラウンドが始まる時にはさつきのMCが「ラウンドーワン!チェス!カーン(鐘)」とやる。しかし、そんな叫ばれてもねえ。チェスだし。
盤面は逐一スクリーンにプロジェクターで投影されるのだが、サイズが小さいうえに場内が明るくてかなり見づらい。白色のマスにある白の駒なんて見えない。
白側には「チョーヤバイ」、黒側には「ジョーカー」と英字で書かれてあるが、あれはなんだらう。リングネーム?
第1ラウンド終了。チェス盤は持ち上げて片附けるらしい。落としたらどうするのやら。つていふか、別にリングの中でチェスしなくても。
ちなみにラウンドの合間には普段著のラウンドガールがラウンド數の書かれたプラカードを持つてリング内を廻る。
マイクを持つてるのがチェスの解説者(チェス五段らしい)。の割りに、「黒がナイトを動かしましたね」とか「黒は右側から攻めるつもりでせうか」とか「ポーンがぶつかりましたね」とか「兩者疲れの色が隱せません」とか「私にはボクシングは分かりません」とかしか言はない。觀客のチェスレベルがどれ位が分からない状態では解説も難しいのかもしれない。
第7ラウンド。イップ選手が反則手を指すアクシデント。しかもそれで勝ちと錯覺したのかイップ選手が立上つた。ざわつく場内に對して、さつきの解説者曰く「將棋ではその場で反則負けになるやうですが、チェスでは戻して指し直すルールになつてゐます」へー。解説が始めて役に立つた。
イップ選手の反則で、すは逆轉勝ちかと思はれたが、指し直しとなつては白(柳瀬)の負けは搖るがない。しかし持ち時間がだいぶ餘つてゐる白はここでじつと長考。